社員ブログ

正月の電車に乗って

 

えっ、朝からビール。それもロング缶ですか!?
去年の正月2日、私は所用で早朝からJRの中距離電車に乗っていた。
郊外のターミナル駅を過ぎ、しばらくすると車内も空いてきて私はボックス席を占領、通路を隔てた隣のボックスには誰も座っていなかった。
そこへ60歳前後の男性が二人、リュックを背負って缶ビールを手に乗り込んできたのだ。
案の定、二人は私の隣のボックスに向かい合って席をとった。
やれやれ、これから宴会が始まるのか。と思いつつ一人旅の手持無沙汰でついつい聴き耳を立ててしまうと、二人は缶ビールを飲みながら静かに話し始めた。
「この会社に入ってから三が日全く出ない、ってことは無いな」
「そうだな、1日か2日は出勤、しかも夜勤だな」
へえ、警備員さんなのかな?
「○○さん、マジメなんだけどサ、仕事が丁寧過ぎて終わりゃしないんだ」
「いやあ、本当だよ。○○さんと組めるのはあんた位だ。俺じゃあイライラしちゃうよな」
その時、車窓の外にカメラを構えた一群の鉄道マニアが見えた。
「あっ、今日はまたたくさん来ているな」
「きっと珍しい電車が通るんだよ。あの人たちは詳しいからな」
「ホント、俺達より良く知っているよな」
やっぱりそうか! ターミナル駅を過ぎて、この人たちが乗ってきた駅には大きな車両基地があったっけ。二人は電車の清掃や整備をする人たちなんだ。
しばらくして二人は缶ビールを飲み干し、空き缶を携えてそれぞれの駅で降りて行った。

ご苦労さん、正月から夜勤で電車の清掃をしていたんだね。
おかげで僕らは気持よく電車に乗れるんだ。
おじさん達、家に帰ってゆっくり休んでよ。何ならもう一本飲んじゃってよ。
私は、二人が手にした缶ビールで誤解した自分を恥じた。

その後、『新幹線お掃除の天使たち 「世界一の現場力」はどう生まれたか?』遠藤功や『奇跡の職場 新幹線清掃チームの“働く誇り”』矢部輝夫(ともにあさ出版)という本を読んで、「テッセイ=鉄道整備」の素晴らしさを知るとともに、あのおじさん達を思い出している。